▼ヨコハマトリエンナーレ2011
トリエンナーレとは3年に一度開かれる展覧会であり、日本では横浜の他、愛知のそれが有名である。今回の横浜トリエンナーレは第四回目で、本企画の開催にあわせて横浜市の様々の地域で「OPEN YOKOHAMA 2011」と銘打ち、連携企画が開催されていた。 本イベントには「OUR MAGIC HOUR」というタイトルが冠されている。(この展覧会タイトルはもともと横浜美術館の建物頂上に配置されている虹のような作品のタイトルである。)
科学では解き明かせない世界や日常の不思議、魔法のような力、神話、伝説、アニミズムなどを基調とした作品に注目し、普段意識することのない忘れ去られた価値観や人と自然との関係を再び考える事によって、より柔軟で開かれた世界との関わり方や、物事・歴史の異なる見方を示唆しようとするのが本企画の主旨である。考古学資料から、近代絵画芸術、現代芸術、写真・映像媒体、インスタレーションなど、古今東西実の多様な作品が、「OUR MAGIC HOUR」という切り口のもと再構成され展示されている。
▼展示スペースの”らしさ”が表れる
今回のトリエンナーレは横浜美術館と日本郵船倉庫(BankART Studio NYK)がメイン会場であり、その2つの展示場所の性格が色濃く反映されていると言える。横浜美術館の場合、マグリットやエルンストなど常設展示で見られる近代絵画の所蔵作品が数多く展示されていて、そこには横浜美術館”らしさ”、つまり、その美術館の「色」が十分に表れていた。
同じく日本郵船倉庫(BankART Studio NYK)の場合も展示スペースの性質が展示物の性格に良く呼応している。ここの内装は、かつての倉庫の姿を敢えてそのまま残しており、コンクリートのうちっぱなしだ。無骨で無機質な展示スペースには、敢えて植物や土など有機的な材料を用いた作品が多く、印象的な対比をなしていた。
会場設計と作品の展示構成が良く練られた良質な企画だと言うことができる。
▼展示作品
ひたすら自由なドローイング。横トリのための作品。 |
ぬぼ〜 |
この光は、別の場所にいる子供たちの動きに連動しているらしい。 |
半跏思惟像。骨になってしまった…。 |
泥でできたカバ。展示期間が進むにつれひび割れがめだってくる。 それも作品の一部なのでしょう。 |
ぐるぐるの中にぐるぐる。しかしそのぐるぐるの招待は… あと、奥に見えるのはオノ・ヨーコの電話ボックス。 |
ファンシーな世界観。 |
▼知識が無くとも楽しめる。
ただ純粋に作品に向かい合うだけで純粋に「楽しい」と思える。中には参加型の作品もあり、鑑賞者が作品を組み立てたり、作品の一部となったりできる。また、形式だった章立てが無いため、それぞれ展示作品の関連性を自ら見出し、展覧会を自分なりに再構築できるかもしれない。 現代アートは表現の手法や主題のあり方が多様化し、時として人々に難解な印象を与え、敬遠される。しかしながら、この企画は前提知識を全く必要とせず五感でただ感じるだけで鑑賞者に「楽しさ」を提供できるように設計されていると感じられた。(逆に言うとこの企画展からは知識を得ることはほとんどできない。)
▼街おこしの中心としての美術展
しかし、最も注目すべきは町全体のイベントの中心として美術展が据えられていることだ。トリエンナーレの開催により、町全体でさまざまなイベントが同時開催され街並は活気づき、地元の経済的利潤を生んでいる。 アートはこのように地域コミュニティの活性化としても大きな力を持っていると実感できるイベントであった。
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