photo by Hironori Oka |
先月の末にバイト先の先輩岡氏と瀬戸内まで小旅行してきました。
道中どこも楽しかったのですが、足を運んだ島々についてご紹介したいと思います。
上の写真は豊島のレストラン「イル・ヴェント」の内観とぼくです。 (ドヤ顔してるつもり)
▼瀬戸内と福武總一郎
いつからか、瀬戸内の島々は日本屈指のアートスポットです。
特に直島、豊島、犬島の三島は人生の一度は足を運んで欲しい場所です。
「瀬戸内旅行」と聞くとかなり渋いような印象をうけますが、
アート、建築の前衛がそこにはあるのです。
【参照】
ベネッセアートサイト直島
日本には数々の優れた現代アートのコレクターがいますが、
福武總一郎氏は間違いなく、日本で最も優れたコレクションを蒐集した
自分物の一人でしょう。
彼は1989年に直島にベネッセハウスを建てて以来、現代アートに関する様々な
施設を瀬戸内の島々に建設していきました。そしてそこに自身のコレクションを
寄贈していきました。
その理念は批判を受けながらもけしてぶれる事無く貫かれ、瀬戸内のイメージとして
現代アートを定着させ、国内のみならず多くの外国人観光客をも同地に
引き寄せたのです。
それまでは、景勝地と雄大な自然に恵まれてはいたものの、観光地として
ぱっとしていなかったこの島々も、今では洗練されたアートと大自然が一体と
なっている日本屈指の文化エリアと呼べるのではないでしょうか。
このブログでは美術館・美術品の感想を綴っていきますが、
ほとんどの場所は写真厳禁であったため、当の作品は文章のみの描写となりますが、
想像力・妄想力をフルに駆使して読んで見てください。
▼直島
妹島氏による設計の港の案内所。 |
草間彌生のかぼちゃと岡氏。 |
ベネッセのプロジェクトの中心地でもある直島は
岡山県の宇野港からフェリーで20分足らずの、
瀬戸内海の美しい青に切り立った断崖が印象的な島です。
直島の東部に位置する宮浦港に着くと、すぐにSANAAによる港の庁舎と
草間彌生のかぼちゃに出迎えられ、早くも非日常の風景が現れます。
地中美術館
地中に埋まってる美術館なので地中美術館。(まんま)
設計は安藤忠雄。
地下1〜3階に3階層にわかれ、平面プランは正三角形の吹き抜けの中庭を中心に、
周りを展示室が取り囲むという、奇抜なものとなっています。
コンクリート、鉄、ガラス、木で構成しつつデザインを極限まで切りつめる
安藤忠雄の基本姿勢が踏襲されており、一見SF的な地底基地を思い連想
しそうになりますが、
自然光の取り入れ方がうまく、館内にうまく光が差し込んでいますし、
中庭に見られる緑の植物が不思議と調和しているのです。
しかもコンクリートの人工的な無機質さと光と緑の自然さが矛盾していません。
また、地下のため階層の変化が感じれないと思いきや、上下の階層変化を
意識することができる不思議な建築です。
【地中美術館に所蔵される代表的な作家】
クロード・モネ(Claude Monet, 1840~1929)は、
- クロード・モネ
言わずと知れた19~20世紀に活躍した印象派の巨匠ですが、
まさか瀬戸内の島にこんな優れた作品が…という感じで驚いてしまいました。
来歴はよくわかりませんがベネッセの福武氏が購入したと思われます。
作品も晩年の睡蓮連作のうちの佳作が集まっております。
そして思わず唸ってしまったのが展示空間のデザインです。
モネのために設計されたという空間でなんと土足厳禁。
床の敷石というかタイルみたいなとりあえず特別な材質がしかれており、
とても居心地がいい。
ホワイトキューブで、天上は非常に高く、間接照明のためやや暗い室内は、
確かにモネを見るに相応しいものでありました。
日本には国立西洋美術館を始め多くのモネの作品がありますが、
ここで鑑賞したモネが最も印象的で美しく感じました。
ジェームズ・タレル(James Turrell, 1943~)という作家は、
- ジェームズ・タレル
直島に来る前は名前すら知らなかったのですが、
ものすごいインパクトのある現代アーティストです。
光を巧妙に使い、人間の知覚の課程そのものを芸術作品にしてしまった、
というべきでしょうか。
本当は白いはずの壁面を脳内の補正で橙色に見せてしまったり、
有限の空間がどこまでも無限に広がっているように見せてしまったり
人間の脳が作る不思議な錯覚を利用します。
空間の演出の仕方は非常に幻想的で、人間の視覚の虚をついたトリックは
なんとも言えない複雑な感情を喚起します。
韓国出身で「もの派」の中心的作家として日本を始め世界各国で活躍した
李禹煥(Lee Ufan, 1936~)の個人美術館です。建築やその周辺の
順路設計も安藤忠雄によるもので、やはり自然の地形を利用した非常に律動的な
平面プランです。建築までの導線設計や広場の空間設計は素晴らしいと感じつつ、
美術館の中に入ってしまうと完全に李禹煥の作品世界に飲まれてしまいます。それほどまでに彼の作品の持つ力はすごかったです。絵画、彫刻、インスタレーションと様々な作品形態がありながら、どれもミニマルな表現の中にしっかりと重いストロークというか、作家の制作の熱が伝わってくるのです。難解さの中にどこかポップなデザインセンスを併せ持つ素晴らしい作品群でした。
家プロジェクト
家プロジェクトとは、直島の本村地区において、古い家屋を改修したり、
新たに建造しなおされた建築の内部空間を、芸術として作品化したプロジェクトで、
本村地区に計6つの作品があります。
「石橋」:内部にはなんと千住博の日本画が飾られています。
母屋には《空の庭》というおそらく水墨画の作品が、
そして、蔵には《ザ・フォールず》という作家の真骨頂たる
滝の絵が、絶妙な自然光照明のもと展示されており、まさしく
鳥肌モノでした…。
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「碁会所」:須田悦弘による《椿》という作品があります。
作家は非常にリアルな木彫を手がけることで有名です。
もちろん木彫による技巧的な作品を見れるのですが、
真と虚が二重に対比されるというトリックがすごい…。
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はいしゃ:大竹伸朗が内装・外装を全面的に作品化したもの。
外装とは裏腹に、内部空間には、ミニマルな空間があったり、
いきなり自由の女神があったりと見所満載です。
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護王神社:透明な階段が、この社の下にある洞窟への
コンテキストを作り出しているという、これもなんとも
神秘的・象徴主義的な作品。作家は写真家として知られる
あの杉本博司。
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南寺:この建物は地味に安藤忠雄(またか!)の設計。
で、内部空間にある作品はジェームズ・タレルによるもの。
人間の目の持つ暗順応なる働きを作品として切り取った
作品があります。人間の資格の虚をつくのが本当に巧い作家です。
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