2011年5月19日木曜日

レンブラント展にいってきた。

国立西洋美術館「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」
公式ホームページ

会期:2011年3月12日(土)〜6月12日(日)


レンブラント展に行ってきました。

光と、
闇と、
レンブラント。

というキャッチが付いていますが、このキャッチが嫌だ。笑

まぁそれは些末なことで文句垂れても仕方ないのですが。笑

僕の卒業研究は19世紀初頭のドイツロマン主義ですが、その研究のためにも避けては通れない画家です。というかバロック期以降の油彩画を考える上でももはや避けては通れないでしょう。

今回のテーマは「光と闇」だそうです。レンブラントが光と闇の表現を油彩や版画においていかに熱心に取り組んだかということを、丁寧に観察して行くというのが本展覧会の主旨です。

彼の有名な話では、肖像画への照明の当て方ですよね。光源はきれいに斜め45度に置かれ、それがまさに絶妙な位置なのです。この照明の当て方はレンブラント・ライトとして写真や映画のライティングにも応用されるほどなのです。
それよりも特筆すべきなのは「キアロスクーロ」の追求の仕方なのです。キアロスクーロとは明暗法、つまり劇的な陰影を付けることで、場面表現を豊かにする方法のことを言います。このキアロスクーロの追求は版画にこそ端的に見受けられます。しかも実に多様なアプローチを駆使しています。

  • 「線」で明暗表現
版画は基本的に線描になりますが、そのため「ぬりつぶす」「ぼかし」といった行為ができないのです。しかし、レンブラントは多様な線で光と闇の表現を追求するのです。彼の生涯の関心事であったと推測も容易です。
  • 「紙」で明暗表現
レンブラントの活躍した時代では、ボロ布の繊維からつくる安い紙が主流でした。公文書などには羊皮紙などの動物の革をなめしてつくった紙が使われました。
レンブラントはこうした紙に加えて、和紙をも使ったのです。紙によってインクの吸収率は違うので、同じ型板でもかない印象を異にする作品ができたのです。レンブラントは意識的に実験的に様々な紙で版画を制作していたのでです。とりわけ和紙は吸収率が良いため、線描の輪郭がぼやけ、独特のぼかし的な表現を可能にします。まさに紙によるスフマート。北方的な硬質な線が和紙によってぼかされるときのなんとも柔らかい光と闇の混淆は実に味があります。


初版とそれ以降の版でマイナーチェンジを重ねていたことも本展覧会で紹介しています。《3本の十字架》《エッケ・ホモ》といった作品は、版(ステート)によってかなり改変が重ねられていることを実際に並べて確認できます。
(日本の版画ではよくありますがね。)

あとは銅版の型があって、おっ!ってなりました。版画というと複製物なわけで、その原本というか唯一無二の「オリジナル」なので、印象に残りました。実際レアなものが来ていると思いました。


《羊飼いへのお告げ》

1634年、エッチング・エングレーヴィング・ドライポイント、262 x 218 mm
アムステルダム、レンブラントハイス/ⓒThe Rembrandt House Museum, Amsterdam


《病人たちを癒すキリスト(百グルデン版画)》

1648年頃、エッチング・ドライポイント・エングレーヴィング、278 x 388 mm
国立西洋美術館

美術展の感想
レンブラントの宗教主題は表現が緻密で正確なのですが、しつこくなく比較的すっきりまとまっているので好きです。肖像画はいわずもがな素晴らしい完成度です。ただ、レンブラントで嫌いなのは女性の体の描き方です。ルーベンス程ではないけど肉々しすぎます。笑
そんなことを再確認できたのですが、しかしながら、日曜日のお昼に行き、混んでたことも相まって、作品と対峙してもそこまで感動は激しくはなかったです。それと版画の鑑賞は思いの外骨が折れるので気合が必要だなと思いました笑

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