2010年12月20日月曜日

青木画廊「Ur-Punkt」展

だいたいアップルストア銀座の裏側あたりでしょうか、こじんまりとしたとある画廊があります。本日はここに行って参りましたー。

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”Ur-Punkt” Exhibition
古典技法を紡ぐ画家たち

2010.12.11(Sat) - 22 (Wed)
11:00-19:00

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青木画廊主催のグループ展です。タイトルにもある通り、古典的な絵画技法である油彩やテンペラによる作品が展示されています。
ぼくの個人的な感想ですが、この展示会の色は「復古的」かつ「幻想的」。
「復 古的」というのは表現技法的な意味です。テンペラ画はとはダ・ヴィンチなどが得意としたどちらかというと古い技法であり(油彩ももはや「古い」かもしれな いですが)、見ることのできる絵画は、そのような技法をわりと正攻法で使用しています。つまり本来の油彩の魅力である、緻密かつ写実的な表現で描かれてい るのです。メディアや技法上としての新しさは無いのですが、やはり生身の熱のある技をもって描かれたそれらの絵は、どこか普遍的な魅力を持っています。

「幻想的」というのはそのままです。英語にすると'Fantastic Art'。つまり浮遊感ある不思議ワールドです。そして川口起美夫氏の影響を見受けられます。もちろんそれぞれの画家を個性を放っていますが、「幻想的」 という点は通底しているように思われます。どれも非常に魅力的です。画廊の強いこだわりをよく感じられます。


展示品の何点かを紹介したいと思います。[画像をクリックすると拡大します]


「循環のはじまり」
「兆し」

「ノクターン」

「はるかな空に」

これらを描いたのは永松あき子という画家です。

Copyright © 2010 Akiko Nagamatsu All Rights Reserved.

…。
えーと私のおかんです。(;´Д`)

自分のブログが実はそこそこアクセス数を稼いでいることを口にしたところ、「私を紹介しなさい」と言われましてこの度ご紹介にあずからせていただきます。(;´Д`)
ここでは良し悪し・好き嫌い云々の批評行為は自重しときますね笑。念のため笑。


さて実は当人の活動は長く、過去に数々のギャラリーにて個展も何回か開いています。

昨年2009年には、マリンバ奏者の吉岡孝悦氏(http://www.yoshiokamarimba.com/)と美術と音楽のコラボレーションを果たし、東京文化会館での演奏イベントは好評を博しました。このような感じでなにかと多忙な活躍をしております。

そして今回Ur-Punktに出展した6作品のうちすでに3作品はすでに売却済みとなりました。めでたいですね。なんならめざせ完売です。

ちなみに家ではしっかり小うるさい主婦で家事等全般してもらってます。お世話様です。
ということで日々お世話になっている感謝も込めここに紹介させていただきました。(;´Д`)
なのでよければ、あと二日ですがUr-Punktにも足をお運びください!

ちなみにこれは我が家に飾られている作品たちです。








以上です。さいさい。
http://www.aokigallery.jp/new/exhibition2010/09_ur/index.htmlhttp://www.aokigallery.jp/new/exhibition2010/09_ur/index.html

2010年12月15日水曜日

LOUVRE - DNP MUSEUM LAB

未来の美術館・博物館ってどうなってるのでしょう?

ぼくは妄想します。

例えば、
インターネット上にある美術館。
そこでは世界の名作が一同に集められ超高画質で鑑賞可能で、解説も映像で行われ超詳しい。とか

例えば、
作品を見た感想をtwitterみたいなのにつぶやいたら、それが展示品の横とかに反映される。とか。

まあ「美術の鑑賞」には色々弊害は来しそうですがw、実現したらおもしろそうですよね。


今回ご紹介するのは「未来的美術展示」です。
ただし美術館ではないw
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LOUVRE - DNP MUSEUM LAB

外交とセーヴル磁器 〜ヨーロッパの歴史を動かした華麗な器たち〜
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正直展示品は大したこと無いのですが、美術展の先進的な姿を見ることができます。
ちなみに、完全申し込み制だけど、無料!
(断っておきますが回し者ではありませんw)

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「ルーヴル - DNP ミュージアムラボ」は、ルーヴル美術館と大日本印刷(DNP)のコラボレーションから生まれた共同プロジェクトです。多様な技術を用いた美術館鑑賞の新しいアプローチ方法を探求しています。ルーヴル美術館は学術的情報の編集を行い、DNPと協力して、作品と観客をつなぐ媒体”メディアシオン”の仮説をたて、実現方法のコンセプトを練ります。DNPはその技術力とノウハウを駆使し、ルーヴルと連携しながら、鑑賞システムを開発・制作しています。
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これがDNPの掲げるプロジェクトのコンセプトです。
つまり、印刷会社としてのDNPの有する独自の技術力を、美術と美術鑑賞に適用させているのです。
その試みはとても面白いですし、美術館サイドとしても高く評価できるものではないでしょうか。
大日本印刷は印刷業を中心として包装、出版など印刷物に関しては業界内トップシェアで、その印刷技術を多くの分野に発展応用させて、いまや「関わらない業界は無い」と言われています。

ここで特筆すべきはアートに関する試みの多様さです。本当に色々な試みをなされている企業です。
ここをご覧になってくれれば。→http://www.dnp.co.jp/csr/culture/graphic_art_gallery.html

さて、「展示」ではなく「展示の技術」に関して色々感想を語っていきたいと思います。
それではDNPの提唱する「メディアシオン」なるものを見て行きましょう。

1. AR技術
AR、つまり拡張現実です。現実世界にデジタルを投影させるというなんとも夢のある技術です。DNPはこの技術に長けていると言えるでしょう。ここでは、ある台の上に、QRコードの載ったリーフレットを置くことで、リーフレットから浮かび上がるようにデジタル映像が投影されるのです。そして同時に音声ガイドも流れます。リーフレットは数種類用意され、それぞれで違った解説をしてくれます。視覚的にも新しいですし、リーフレットを選びながら置いて解説を聞くというのが楽しい。
さらに実際の展示物に解説を投影しちゃったりするのです。ただこれは作品保全の面で大丈夫かなと思ったりもしました。

2. マルチ・ディスプレイ
普通の美術館では冒頭に主催者の挨拶などのパネルを設置して、来館者にまず読んでもらい概要を把握してもらいますが、ここでは、展示パネルの代わりにマルチ ディスプレイを設置。簡単な映像を流してその代わりとするのです。映像なので、文章よりも何倍もわかりやすいし、客が入り口付近に溜まってしまうこともコ ントロールできるかもしれないですし、導線誘導としても効果を発揮しそうです。
さらに!解説パネルのマルチタッチ・ディスプレイの採用!タッチパネルで直感的に操作できる。そして見やすい。内容の差し替えも容易だし、予算があればどこの美術館も今すぐに取り入れたいのではwカラーフィルタのシェアも国内トップなだけにディスプレイの発色はいいです。(他社製かもですが。もしかしたら。)

3. インタラクティブ・コンテンツ
指差せば解説が始まる。(自分の動作を認証してくれる。)モノを動かしたり置いたりすると解説がはじまる。
などなど。自分の動きに反応して、色々なことが起きるのです。そんなコンテンツがいくつかありました。実際楽しいです。わくわくしながら鑑賞を進めることができますし、見終わった頃にはかなり知識も深まっています。

4. アーカイブ化
絵画などを超高画質でスキャンする技術も・・・持ってるんですか?正直そのへんはよくわかりませんが、ただ立体物を3Dスキャンすることはできるようで、マルチタッチディスプレイで自由に閲覧することができます。すごい!マルチタッチディスプレイで、自由に上下左右向きを変えながら隅々まで見ることのできるデジタル・アーカイブができるのではないか。それってすごい。「デジタル美術館」なるものが近いうちにできるかもしれませんね。妄想をかき立てます。

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以上のように、そのどれもが知的好奇心を醸成するような装置として機能しています。とても楽しい。

他にもDNPには色々な「メディアシオン」があるでしょう。開発中のテクノロジーもあるでしょう。
いやー今後もDNPの技術開発が楽しみです。

ただ、これらの技術をお金を出して採用してくれる美術館がどれだけあるでしょうか・・・。今本当にどこもお金なさそうですからね。。どこも「必要性を感じない」とか言って一蹴してしまいそうです。
実際これらの装置が無くても当然展示は成り立ちますし、見方によってはただの子供用のアトラクションです。

ただ、ぼくは本当に夢とか未来性を感じるのでこの試みをすごく応援します!お金が死ぬほどあったら投資したいw(無いからできませんorz)

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従来の美術館のあり方はこうでした。(一部の美術館は以前こうかもしれません。)
来館者はただ作品や文化財を「享受」することを唯一の目的として、作品を穴のあくまで眺めて自分の感性に反応させる。
美術館側も、ただ動線誘導と解説パネルで最小限の情報をコンテクストに沿って提供する。

もちろんこれが基本に据えられるべきことですが、それだけでは不十分です。

そもそも、私たち美術館を鑑賞したいと思う人は何を求めるのかというと、実際は「知識を深める」だとか「美を享受する」なんて高尚なものではなく、「日々の疲れを癒す」だとか「日常の喧噪から離れる」ことが美術館に行く理由としてい多いのではないでしょうか。
また、美術館・博物館は生涯学習という考えをかなり重要視するようになりましたし、一辺倒に情報を投げつけるのではなくより楽しく双方向的な「コンテンツ」を作ることに主眼が置かれているように思われます。

なので当然、美術館・博物館の展示のあり方は時代に沿って変わってきているのです。
傾向としては最近の美術館は「楽しい」。もちろん良い意味です。

そして、さらに「テクノロジー」の発展も大きな影響を与えていると言えるでしょう。
デジタル・サイネージやの利用や、資料のデジタルアーカイブ化など
というかテクノロジーの恩恵で美術館のあり方も外発的に変わってくるかもしれません。美術館は展示だけでなく、保存、研究などの面でも大きく効率化されるでしょう。

東 京国立博物館平成館で行われている「東大寺大仏 天平の至宝」を見てきたのですが、それぞれのコンテンツが圧倒的で「美術展もここまできたか!」と驚きま した。(もちろん展示品も重文・国宝レベルの優れたものばかりです。)めちゃ金かかってます。是非ご覧になってみてください。


最終的に何が言いたいかというと
美術鑑賞のあり方は時代に伴って変わる。美術館とかもテクノロジーの恩恵を積極的に享受すべき。
文化に資するテクノロジーの開発に取り組むことは素晴らしい。
③Karaかわいい。
④少女時代かわいい。

やっぱ韓国アイドルは自分の趣向にびびっとくるものがあります。

あとそろそろクリスマスですね。良いクリスマスをお過ごしください。
自分もwktkしたいものです。

2010年11月3日水曜日

仙厓義梵

今日は禅画について。

仙厓(せんがい)
江戸時代後期の臨済宗僧にして禅画家。
文人画の範疇に入るんですかね。禅僧という意味では「文人」ではないです。ただ池大雅と様式的に共通点があると思ってしまうのは間違いでありましょうか。
専門画工という訳でなく、禅の名僧でありながら、人々への教化という目的で描かれた作品が、有名になり多くの職業画家に影響を与えたのです。そして今日の評価と人気を築くにいたります。

つまりこの方の画にはしっかりと禅の教えを説明するという機能を持つのです。
しかし、当然今の我々が評価する所以は、独特の「ゆるさ」「癒し」といった要素があるからでしょう。ひこにゃんとか、「ゆるキャラ」ブームですし。

つまり現代の我々の感性に通底する魅力をしっかり有しているわけですね。

前置きはこの辺にしておいて・・・



さて行って参りましたのは、、、どん。

出光美術館




(11月3日まで)

出光美術館の仙厓コレクションが一挙に公開されています。若者こそ行ってそのゆるい癒し系の画にふれてみるベキです。きっと通ずる感性のはず。
ファッションでもアートでも「ゆるい」系が流行っている感がありますが、仙厓の画はゆっるゆるです。
禅画というと、雪舟の水墨画とか、頂相のような肖像画など、堅苦しいものがまず思い浮かびますが、そういう凝り固まった議論は抜きにして、ゆるい系アートを見て感じたぼくのゆるい感想を綴って行きたいと思います。

(すべて会期中に展示された作品です。)


《自画像画賛》
仙厓 そちらをむいて なにしやる

ちょwwwwwwwwww
テキトー!
なんて思ってるぼくですw
一応自画像ですよね。
あまりに潔い。
見たら笑顔になってしまう。
そこがすごいのです。



《狗子画賛》
「きゃんきゃん」。・・・。
ちょっ、、そんな、きゃんきゃんて。
かわゆす。
なんと肩の力の抜けたゆるい筆なんでしょう。筆のスピード自由、筆圧自由、しがらみに縛られてないフリーダム感が伝わってきます。しかし、やはりその線は生きていてなんとも奥ゆかしいものです。背の線が好き。
もちろんこの中に禅の教えが込められているのです。








○△□

抽象画キタ━(゚∀゚)━!って感じ?
いやでも真意はなんだろう・・・。プレステのコマンドか何かか。
・・・感想とか出てこないし理解できないしコメントしずらい。
それが率直な感想w
いやいや、もちろんこの中に禅の教えが込められているのです。
なんでも
:修行を完成させた完全なる円=仏陀
:修行途上の自分
:修行の前段階?
らしい。
それすなわち
修行の諸段階⇒我々のあらゆる諸段階⇒万物のあらまし⇒宇宙
ってなるらしい。禅の世界観!
抽象画って視覚芸術としては表現(技巧的な面で)が手抜きで「こんなもんに付き合ってられっか!」ってなるけど、抽象画で大成する人って絶対に深淵な哲学を持っています。じゃないと描けないし、描いていいもんじゃない。



《一円相画賛》

円、つまりこれは角の無い完全なる形であり悟りの境地に辿り着いた仏陀を表現しておりその無駄の無い...(キリッ)
って思わせておいて
「これくふて茶のめ」
と言い放つ。
そう、茶菓子なのです。
ここでもまた失笑を誘うユーモアセンス。
仏教の超越的な解釈から、卑近な解釈まで縦横無尽に往来するところがこの絵のすごいところ。もちろんそれを意図して描かれています。(臨済宗のお坊さんですからね)


《頭骨画賛》
「よしあしハ 目口鼻から でるものか
よし・あし=葦は地域によって「よし」「あし」とよばれていました。
それと善し悪しをかけているのです。
目線であったり発言であったり鼻のつき方(顔立ち)から、その人の善悪が出るものなんだな、という内容。うまいじゃありませんか。
こういったうまい川柳もいっぱい残しています。座布団一枚!


最後に仙厓さんから、ちょっと良いメッセージ。

《牡丹図画賛》
うへて見よ 花のそたたぬ 里もなし
心からこそ 身はおびただしけれ

花が全く育たない土壌なんてものは無いのです、だから植えてみなさいよ。
心をこめて大切に取り組めば、きれいな花がいっぱい咲きほこるさ。

何事もチャレンジだ!誠心誠意取り組めば結果はついてくるんです。
就職活動をしなきゃいけないぼくにとっては良いメッセージです。

これを最後まで読んでくれたあなたも、このメッセージを汲み取って頂ければ仙厓さんもよろこびます









仙厓のまとめ
①ゆるい
②深い
③ゆるふか

(まとめは仙厓さんに倣ってテキトーな感じです
わり。

2010年10月28日木曜日

ルネ・ラリック

どうもご無沙汰です。さて、今まで絵画史しか扱ってなかったのですが、初めてデザイン史について扱ってみようかなと思います。今回のテーマはルネ・ラリックであります。

日本でも知名度は高い19世紀末から20世紀前半に活躍したジュエリーやガラス細工の芸術家・デザイナーです。ジュエリーやら香水瓶やらが主な作品なので、ラリック関連が出品される展覧会は女性(またはカップル)ばかりです。ターゲティングは女性に向けて企画してるのでしょうが、どうも男たるものにとっ て、そこまで興味はわかないのでは・・・。
しかしぼくは、男で一人で、見てきました。香水瓶。どや。まわりは女性または、カップルだった。どや。つまりはスイーツ系展覧会。

東京都庭園美術館
きらめく装いの美
香水瓶の世界

HP
http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/perfume/index.html
(できれば女性と行きたかったな笑)
古代かた現代にいたるまでの「香水瓶」の歴史を網羅しています。
女性は絶対行かれるべきです。楽しめます。カルティエとかディオールの香水瓶もありましたし。
しかし、男性は・・・ファッションやモードに興味をお持ちであったり、服飾系の方面の方でないかぎり、楽しめるか保証はしませんw
だから、敢えて男性だから行くのもありかもしれません。女性の心を理解すつ糸口になるかもしれませんw

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香水瓶はあくまで商業から生み出された「商品」であって、作家がみずからの表現の手段として創造したものではないのです。つまりアートではなくデザインなのです。(デザインは消費されることを前提とします)
しかし、香水瓶というのは、富裕な階級の夫人が愛でる「嗜好品」としての側面も持ち、そのため細かな意匠が施されたものや、洗練された優美な外観をもっています。単なる香水の「入れ物」としての機能を越えて、それ以上の付加価値を持っていると言えます。
しかし、当然ですが香水瓶のデザインは、女性に向けています。そういった意味では女性の文化の一つの切り口と言えるかもしれません。正直普通の男子が香水瓶を見てうっとりしてたらひきますよね笑。でも最近はオネエマンみたいなの増えてるから一概には言えません。

しかし、ルネ・ラリックのデザインはやはり目をひきますね。
もちろん、この展覧会でも彼の作品は数十点あり、ラリック社の品々も出展されていました。


Rene Lalique (1860-1945)
↓↓↓↓

最近でもラリックの評価は日増しに高まりを見せています。最近の展覧会でのアゲアゲ感を見てみてもわかります。
国立新美術館で「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」(2009年6月24日〜9月7日)が開催され、ラリックのコレクションが多く出展され日本で公開されました。
http://www.nact.jp/exhibition_special/2009/lalique/index.html
また、国立近代美術館の工芸館でも「アール・デコ時代の工芸とデザイン」(2010年4月27日〜6月27日)でラリックの作品を一部見る事ができました。
http://www.momat.go.jp/CG/art_deco2010/index.html
箱根にはラリック美術館があり、現在も「生誕150年記念 ジュエリー新コレクション」(2010年4月17日〜11月23日)で作品の展示をみることができます。
これだけみても、日本でも興行収入が得られ、人気・評価が非常に高いということがわかります。その所以も充分に納得がいきます。単に、作品がすごく魅力的・芸術的だからです。
彼の作品は、機能性、芸術性、デザイン性のバランスが非常に良く調和しています

そして特定の様式に固執するのではなく、時代に反応して、作風を昇華させているのです。彼の作品様式はアール・ヌーヴォーの時代とアール・デコの時代にまたがります。この二つの様式をまたぐアーティストは中々いません。自己のスタイルを発展させていくってすごいうことだと思います。(Miles Davisなんてそういった意味では天才。)

はて、なんともシャレオツ感あふれるこの《アール・ヌーヴォー》と《アール・デコ》という言葉ですが、この2つ言葉の違いはご存知でしょうか。ぼくも詳しいことまでは踏み込めませんがざっと比較して行きましょう。wiki見れば一発かもしれませんが笑


アール・ヌーヴォー》と《アール・デコ》の比較

【共通点】
①装飾美術、応用美術、工芸に適応される装飾様式の概念である。簡単に言えば、ファッション、装身具、インテリア、家具などのデザインの様式である。
②建築様式に従属したものと見なされていた装飾美術・工芸に独立した領域を与えた。
③「歴史主義」の反動として現れた、過去の様式に従属しない「近代的」な様式である。
④産業の発展による画一化への反発
⑤フランス発(厳密に言うとそうでは無いのですが細かいので割愛。言葉は仏語。)

【相違点】
①時代
アール・ヌーヴォー:19世紀末〜第一次大戦前。/代表人物:エミール・ガレなど
アール・デコ:第一次世界大戦後、1920年代。/代表人物:タマラ・ド・レンピッカ、ココ・シャネル、エルザ・スキャパレリなど
(時代が違うということはそもそも成立の背景も精神も全く違うということです。)

②諸相
アール・ヌーヴォー
・「新しい藝術」の意
・装飾性が高い。
・「装飾のための装飾」と批判されることもあった。(結局富裕層の贅沢品の様式となってしまったため)
・「花の様式」
・情緒的

アール・デコ
・「新しいデザイン」を意味するアール・デコラティフの略
・機能性を追求
・装飾過多を廃し、クールで洗練された外観。
・円形に加え直線的要素も加わる。
・近代性を強く意識


実際に作品を見ると一目瞭然ですね。

アール・ヌーヴォー①
《雄鶏の頭》


アール・ヌーヴォー②
《蜻蛉の精》

緻密で繊細。超絶技巧を言わんばかりの巧みな技術。息をのむ優美さですね。
で、それに対してアール・デコ期はというと・・・


アール・デコ①
《風の精》

アール・デコ②
《ダン・ラ・ニュイ》

一気にモダンでシンプルになります。かなり違いますよね。ですが、その芸術性はむしろ洗練されたものになっているように感じます。過度な装飾性が排除された無駄のないデザイン。それでいて、深みというか、訴えかけるものはぐっと増しているように感じます。

なかなかに形を異にした二つの様式ですが、ルネ・ラリックはこの二つの様式を上手に渡り歩いたのです。ぼくが思う、彼の「すげえ」ところはここです。
彼の制作史はアール・ヌーヴォーのジュエリー時代と、アール・デコのガラス時代に大別できますが、その変遷は工芸品から産業芸術への変化とも言い換えることができます。
さ らに、このことは「手作業を止め、商業化してしまった」と批判されるべきものではなく、むしろ手作業でなかろうと、芸術性がより高みに向かっているので す。ラリックの作品のデザイン性は同時代の中でも群を抜いてセンスに溢れていると思います。までも、前期と後期でくらべると、やはりアール・デコの後期の 方が断然すきです。知的ですよね。
彼の作品は「商業」と「芸術」が調和しうるということを教えてくれます。

今回はルネ・ラリックの作品を通して二つの様式概念を書いてみました。ご理解いただけたでしょうか。

あと、蛇足になりますが、東京都庭園美術館の建築はアール・デコ様式の建築で、今回の美術展とマッチングが素晴らしいです。玄関のガラス細工はラリックによるものですし、その他の室内装飾など、アール・デコ調で統一されオシャレ感まっくす。
あと、建築であれば、近代美術館の工芸館も同時代の様式です。両方とも美術館でありながら、建物自体の芸術的価値が高く、瀟酒でとても深いおもむきを湛えています。両方ぼくのお気に入りのスポットであります。


今回のまとめ
①アール・ヌーヴォーとアール・デコはシャレオツな感じで似てるけど結構ちがう。
②でもルネ・ラリックは両方通った。だからすげー。かっけー。
③香水とかまったくわからないというダメンなぼく

2010年10月16日土曜日

保存を兼ねた展示法

本日のテーマ
東京国立博物館

法隆寺宝物館


現 在、東京国立博物館の平成館では「東大寺大仏ー天平の至宝ー」が開催されており(12月12日まで)、私が訪れたのは休日ということもあいまって上野は公 園から博物館にかけて多くの人々でにぎわっていた。国立博物館の敷地内に入ってみると、本館や平成館には多くの来場者が集まっているようだが、法隆寺宝物 館に向かう人影は休日の昼間であるのにごくまばらである。多くの人は平成館や本館の目玉の企画展を目当てであって、常設である法隆寺宝物館は素通りすると いうのが大方であろう。芸大に通っていた知人に聞いても「(宝物館で)お茶はするけど展示は見た事がない」とのことであった。確かに知名度はそこまで高く なく、敢えて注目する人は少ないかもしれない。


(法隆寺宝物館)

しかし、素通りしてしまうにはあまりに勿体ない建築である。
ま ずはガラスを基調としたポストモダンの建築の外観の装いに目がいく。「法隆寺宝物館」という名称からくる古風で荘重な響きとの乖離に新鮮な印象をうける。 設計したのは慶應のOBでもある谷口吉生である。噴水の脇を通る水上の道からエントランスに導かれるときも、訪問者の心持ちを洗い流してくれるような機能 を有している。

(左手に噴水が上がっている。)


エントランスホールは、ガラス張りのため光が差し込み明るく開放的である。
地上階から展示室は始まるのだが、高機能そうな自動ドアが開き訪問者を展示室へと迎え入れる。自動ドアが閉まり完全に室内に入ると外の音 声は驚くほど遮断され、外との密閉性が非常に高いことが伝わる。実際、展示室自体さらに一枚石の外壁を隔てられ外気の影響から完全に守られているいるよう だ。さらに展示室内は一転してかなり照明が弱く設定されており目が慣れるのに時間がかかる程暗いのだ。その中で適度に作品に照明が当てられている。開放的 な「外」に対して暗い静かな「内奥」という対比が連想された。
もちろん、照明が暗くされているのは第一義として作品保護の観点からであろう。ここに収蔵される献納宝物はもろく保存の難しい作品が多いため、温湿度管理は言うまでもなく、外気との隔絶と照明の繊細な調節が不可欠なのである。


(第二室)

そして最も面積のある第二室には、小型の金銅物がかなり斬新な方法で展示されている。金銅物が一体ずつ方形のガラスケースの中に安置され、部屋中に等間隔に縦横に並べられているのだ。
こ こでもガラスケースに入れるということで、一体ずつ最適な環境で保存するということを実現しているが、美的側面を高める働きも多いにある。ガラスケースの 中で輝く仏像の姿はまた格別であり、それらが並べられるとまるで部屋全体が作品であるかのような印象をうけた。この中を縫って歩くとまるで仏の織りなす小 宇宙のような世界の中にいるようである。
その他の展示室でも同様に、暗い静かな室内に献納宝物がガラスケースの中に収められ最低限の照明によって照らされている。

つまり、このようなことが言える。
作品は暗い保管庫で「保存」されるのとほぼ同じ環境の下で「展示」されている。
しかもこの保存機能を優先した環境は、美的側面を損ねるのではなく、作品の持つ美を十二分に引き出す「展示」を達成している。
「保存」機能と「展示」機能がただ共存するだけではなく、組み合わさってより優れた機能を創出しているのだ。

そういった意味でこの建築は実に優れている。
難点を挙げるとすれば、「知的好奇心を満たす場」としてはそぐわないことである。つまり、室内が暗いのでゆっくり解説を読みながら鑑賞し作品に関する知識を深めるということに適していないのである。この施設は純粋に「美的体験の場」に適していると言える。
し かし実はこの難点も、中二階に位置する資料室によって補完されている。法隆寺の宝物に関するデータベースを完備し豊富な文献も閲覧可能である。この資料室 は充分に面積もあり座り心地の良い椅子が多くありくつろぎながら知的好奇心を満たすことができる。子供が熱心に勉強する姿も見られた。


(資料室)

法隆寺宝物館というやや特殊な目的のものであれど、ミュージアム建築としての機能の理想型を示す建築なのではないだろうか。
これからも国立博物館を訪れる際にはここに立ち寄って「お茶」でも休憩でもしたい、と思わせるお気に入りの場所だ。

(いつもと文体が違うのはぼくが提出する文章の一部転用のためです笑)