2011年6月2日木曜日

パウル・クレー展を礼賛する記事。

今回足を運んだ展覧会は「パウル・クレー 終わらないアトリエ」です。


パウル・クレー 終わらないアトリエ
PAUL KLEE: Art in the Making 1883-1940


【HP】http://klee.exhn.jp/
【会期】2011年5月31日(火)– 7月31日(日)
【会場】東京国立近代美術館
【主催】東京国立近代美術館、日本経済新聞社
【後援】スイス大使館
【共催】NEC、損保ジャパン、大日本印刷、東レ、りそな銀行
【関連イベント】講演会、コンサート、トークショー

感想を先に述べます。絵に一瞬で魅了されました。大好きです。
作品も充実してますし、章構成も秀逸、文句なしです。(←何様)
タイトルにもあるように礼賛します。

▼展示空間に関して

意図的で質素で無機質な空間がつくられています。クレーの作品を展示するのに相応しいと思いました。しかし、もちろん様々な"妙"が凝らされていました。

  • 章立てを説明するもの(普通はパネルであったり垂れ幕であったりする)は、簡易なボール紙に明朝体で文章が書いてあるだけという質素なものでした。
  • 展示パネル(作品の横にある)は簡素な厚紙をピンで停めただけの、粗雑な印象を与えかねないものなっています。
  • 室内を覆う壁紙なども全くの無機質な白色でフラットな空間を作り出しています。
  • しかし、鑑賞の順路となる導線設計はかなり奇妙なものになっており、まるでクレーの作品の線のように、くねくねと進みながら鑑賞するのです。(途中で混乱して迷いました笑)鑑賞者は不思議な感覚になります。
一見不器用な仕様に見えますが、こうした全ての展示空間における「工夫」が、画家の世界観や企画の主旨を伝えるのに十分に練られたものであることは明白です。

▼展示構成に関して

今回は主旨が「クレーの作品は物理的にどのように作られたのか」に焦点を当てるというで企画であるため、章構成も年代やモチーフを追っていくというよりは制作の「技法」や「スタイル」に焦点があてられています。

  1. 現在/進行形ーアトリエの中の作品たち
  2. プロセス1:移して/塗って/写して
  3. プロセス2:切って/回して/貼ってー切断・再構成の作品
  4. プロセス3:切って/分けて/貼ってー切断・分離の作品
  5. プロセス4:おもて/うら/おもてー両面作品
  6. 過去/進行形ー”特別クラス”の作品たち
起承転結がすっきりしており主催者の意図も明快で、まさにクレーの作品のように企画自体もうまく「構成」されていると感じました。

▼展示作品に関して

本当に素晴らしかったです。何が素晴らしいかを具体的に伝えるのは骨が折れるのですが、この画家の作品を見た後は、なんとも穏やかな気持ちになれるのです。
色彩、線、構図、絵の要素全てが有機的にからみ合って一つの総体を作っています。
《花ひらいて》1934、油彩・カンバス、81.5×80.0cm、 ヴィンタートゥーア美術館
© Schweizerisches Institut für Kunstwissenschaft, Zürich, Lutz Hartmann 
四角形が敷き詰められているだけなのに、大地から花が咲き誇る情景が躍動的に捉えれているように感じられます。この一見無機質で単純な構図の画面なのに、人の心を動かすパワーってなんなのでしょう。すごいです。
《蛾の踊り》、1923、油彩転写・水彩・鉛筆、愛知県美術館
作品に対して惹かれるところは人それぞれですが、ぼくは彼の「色彩」にやられました。この作品は油彩転写(うつし絵みたいなもの)による線描と水彩による彩色で描かれていますが、このグリッドで分割された色彩のグラデーションのセンスの良さといったら筆舌に尽くしがたいものがあります。水彩による微妙なテクスチャの出し方・ニュアンスが本当にかっこいい。見た目の美しさと内面的な精神性が調和しています。

重ねますが、この展覧会は本当に良かったです。上半期ナンバー1かもしれない。展示空間・展示構成・作品が全て合わさって秀逸な企画となっています。企画者まじぱねえ。もちろん、ここでは紹介しきれないほど多くの作品がぼくの心を打ちました…。近いうちにリピートします。

あと会期中の関連イベントで茂木健一郎さんがトークショーをするみたいですね。

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